HOME > 診療案内 > 日帰り硝子体手術



①はじめに

硝子体手術とは、白内障の手術のような“めだま”の前の方の手術と違い、奥の手術になります。手術の適応となる疾患として、糖尿病網膜症、網膜剥離、黄斑円孔、網膜静脈閉塞症などのいわゆる眼底疾患が対象となります。そもそも硝子体とは、“めだま”の中の大部分を占める透明なゼリー状の組織で眼球の形態保持の働きをしています。硝子体は加齢とともに変化し、硝子体後方にある網膜を牽引する刺激が加わります。この刺激が、眼底疾患を悪化させることが多いため手術の際に取り除いてしまします。硝子体を取り除いた後、各疾患それぞれの治療を行います。

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②硝子体手術の概要

硝子体手術は1970年代にアメリカのMachemer らによって近代的な経毛様体扁平部硝子体切除術が考案されて以来、手術器械や手術器具の進歩に伴い、治療の安全性ならびに手術成績も向上し、現在でも進化し続けている分野です。眼科領域の中でも、難しい手術ではありますが、安全性が高まったことで手術適応が拡大傾向にあります。
手術では、“くろめ”と“しろめ”の境目近くに3ヶ所の小さな孔をあけ(3ポート作成)、手術器具を挿入します。その孔のサイズは、わずか約0.5mm程度で25G(G:ゲージ。孔の大きさを意味します)という大きさになります。私が眼科で研修を始めた10年ほど前は、約1mm程の大きさ(20G:数字が小さいほど直径は大きくなります。)が主流でした。たかが、0.5mmと思われるかもしれませんが、この0.5mmには大きな違いがあります。0.5mm(25G)の傷口の場合は、手術後、傷口を無縫合で終わることができます。しかし、1mmの傷口(20G)の場合、傷口を縫合しないといけませんでした。そのためには、手術開始時、“しろめ”の表面の結膜という膜を半周から全周切開し、白目をむき出しにし、その表面からの出血を抑えるため、凝固するというようにいくつかの工程が必要でした。現在行われている25Gシステムでは、結膜さえ切開する必要がなく、結膜上から孔を開けるだけです。これにより、手術時間の短縮化、術後の不快感,痛みの軽減、回復期間の短縮化など大幅に改善しました。


手術までの流れ

当院にご来院頂き手術の方針ならびに手術日の決定
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手術前検査(全身状態の確認)
 内科受診して頂き全身状態に問題ないか確認します。
 かかりつけの内科がある場合は、そちらを受診して頂きます。
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眼科で行う術前検査と手術内容のご説明
 角膜内皮細胞を測定したり、“めだま”の長さを測る検査などを行います。
 また、この日は、具体的な手術内容のご説明をさせて頂きますので、ご
 家族様のご同席をお勧めさせて頂いております。
 ↓
手術3日前から点眼開始
 感染予防に点眼を開始して頂きます。
 手術を受けて頂く眼に、1日4回点眼をお願いします。
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手術当日
 手術開始予定1時間半前に来院して頂き、手術の準備をしていきます。
 瞳を開く点眼薬をつけたり、点滴をしたりと手術の準備をしていきます。
 手術終了後は、15分程度静養室で休んで頂き、問題なければ、ご帰宅となります。
 術後は、眼帯となりますので、眼帯をつけたままお帰り頂きます。
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術後診察
 術翌日は、朝一番で予約をお取りします。
 ご来院頂いてから、眼帯を外し診察になります。
 特に問題なければ、この日より眼帯は必要なく保護用眼鏡をお使い頂きます。
 その後、術後4日目までは毎日診察となります。
 ↓
1週間後
 その後は、回復を見ながらの診察になりますが、始めは1週間に1度の診察になります。


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③主な手術適応疾患

・糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)
・硝子体出血(しょうしたいしゅっけつ)
・網膜剥離(もうまくはくり)
・黄斑円孔(おうはんえんこう)
・網脈静脈閉塞症(もうまくじょうみゃくへいそくしょう)
・網膜前膜(もうまくぜんまく)
・増殖硝子体網膜症(ぞうしょくしょうしたいもうまくしょう)
 など

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④手術方法(手術の流れ)

手術室入室後専用のイスに座って頂きます。手術が始まるときに背もたれが倒れ仰向けの姿勢をとって頂きます。ちょうど美容室で洗髪する際のイスと同じような感じです。

❶消毒とドレープ
 目の周りの皮膚と眼球表面を消毒していきます。その後、手術する目の部分だけ孔の開いた清潔な布をお顔にかけます。

❷麻酔

 硝子体手術時の麻酔は、目だけの痛みをとる局所麻酔になります。点眼による麻酔をした上で、“テノン嚢下麻酔”という眼球壁に沿って“めだま”の奥に麻酔薬を流す方法と2種類の麻酔をします。これにより、手術中は、触られる感覚は残りますが、痛みはほとんどなく手術を受けて頂くことができます。これまでの経験上、痛くて手術続行不能だった患者さんもおりませんので、安心して手術を受けてください。また、術中はお話できますので、何かありましたらお声かけください。

❸手術開始
 実際の手術では、白内障を同時に手術することが半数以上であります。白内障手術を先に施行した後、硝子体の手術になります。手術方法は症例によって異なりますが、始めに硝子体を切除することころまでは概ね同じでそこから先が変わってきます。手術時間は、白内障手術の時間を入れても20分から40分ほどで終わります。難症例では、それ以上かかることもあります。

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⑤手術費用

硝子体手術費用:病気、病態により異なりますが、おおよそ以下のようになります。


※高額療養費制度・・・
日本の公的医療保険では、全額を患者さんが負担することなく、病院で医療費全体の3割または1割の一部負担金を支払います。しかし、一部負担金であっても、医療費が高額である場合は、患者さんにとって負担となるため、その負担を軽減するために高額療養費制度があります。医療機関にかかった際、規定額を超えて一部負担金を支払った場合には、加入する保険窓口から超えた分が返金されます。その自己負担限度額は、年齢や所得により変わります。70歳未満でも適応になりますが、自己負担限度額は、70歳以上と比べ高額になります。詳しくは、加入する保険窓口にお問い合わせください。

⑥さいごに

 ほとんどの症例で日帰り硝子体手術を受けて頂くことができますが、症例によっては入院が必要なこともあります。その場合には、こちらから入院設備のある病院にご紹介させて頂きます。


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