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斜視・弱視

-弱視-
①弱視とは

 少し難しい言葉になりますが、弱視とは以下のように定義されています。
 『弱視とは視覚の発達期に視性刺激遮断あるいは異常な両眼相互作用によってもたらされる片眼あるいは両眼の視力低下で、眼の検査で器質的病変はみつからず、適切な症例は予防、治療が可能なものである(植村の定義)』とされています。
 このままではわかりにくいので、シンプルに言ってしまうと、明らかな眼の病気がないにも関わらず、何らかの原因で矯正しても視力が上がらない状態で治療をすると治る見込みがある状態と言えます。

 生まれてすぐの赤ちゃんの眼球は、大きさが小さいということ以外は、見た目上、ほとんどが大人と同じ状態に完成されています。しかし光刺激を網膜が感じ取り、脳へ伝えていく仕組みは完成していません。物を見る(光刺激が加わる)ことで脳が刺激され赤ちゃんの眼は成長しているのです。生後3歳くらいまでの間に劇的に成長します。その期間までになんらかの原因で、視力の発達がなかった場合は、その後治療をしたとしても、視力はあまりでないことが多いです。

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-弱視-
②弱視の種類と原因

❶斜視弱視
 斜視角の大きな斜視があると片眼が使われず、発達しないため弱視になってしまう状態を言います。斜視については、別項で詳しくご説明します。

❷不同視弱視
 片眼のみ強い遠視や乱視が存在し、こちらの眼だけ視力が発達しないため弱視になってしまう状態を言います。

❸屈折異常弱視
 両眼とも強い遠視や乱視のせいで両眼とも視力が発達しないため弱視になってしまう状態を言います。

❹形態覚遮断弱視
 生まれつきの白内障や眼瞼下垂や眼帯の使用などにより、光刺激が加わらず視力が発達しないため弱視になってしまう状態を言います。

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-弱視-
③検査

まずは、眼に病気がないかよく診察します。眼の前の方から“めだま”の中(眼底)まで詳しく観察します。
 加えて、視力検査や屈折検査(遠視があるのか近視があるのかを見る検査)や斜視検査を行います。屈折検査では、近視の調節けいれん(リンク)の項でもご説明したサイプレジンテストを行い、本来の屈折値を調べます。
 さらに、強い遠視が疑われるような症例では、近視の予防の項でも登場したアトロピンというお薬を用いて、もっと強力に調節力を抑え、真の屈折値を調べます。サイプレジンもアトロピンも作用的には調節力を抑えるだけでなく、散瞳する作用もありますので検査後外出時はまぶしく感じるようになります。次にそれぞれのお薬の特徴を表にまとめます。



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-弱視-
④治療

弱視の種類がいろいろあるようにその治療法もそれぞれです。

❶斜視弱視
 斜視によって外れてしまっている眼の方でもしっかりと物を見せてあげることが治療になります。そのために、斜視ではない方の眼を一定時間遮蔽(アイパッチ)して、見えていない眼をより使うように働きかけます。斜視を手術して眼位を矯正することもあります。また、遠視や乱視もある場合は、それを矯正してあげるだけで改善することもあります。

❷不同視弱視
 遠視や乱視の強い眼に対して眼鏡を作製し、ピントがきちんと合った状態での光刺激が脳に伝わるようにします。加えて、見える方の眼を一定時間遮蔽(アイパッチ)し、見えていない眼をより使うように働きかけます。

❸屈折異常弱視
 屈折異常を矯正する眼鏡を作製します。

❹形態覚遮断弱視
 原因となる眼の病気の治療を最優先します。その上で、見えていない方の眼をより使うように、一定時間健眼を遮蔽(アイパッチ)することもあります。

※アイパッチとは
 上記の説明ででてきましたアイパッチですが、弱視の治療の一環として、訓練に使うものです。健眼(見える方の眼)を遮蔽するために使う眼を覆うシール状の眼帯です。1日のうち数時間を限定して用います。これにより、アイパッチ使用時は見えていない方の眼を使うことになり、脳に光刺激がより伝わるようにトレーニングします。



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-斜視-
①斜視とは

物を見ようとしているとき、片方の目は、正面を向いて目標を見ているのに対し、もう片方の目が違う方向を見てしまっている状態をいいます。この視線の異常を①眼位の異常と言います。はずれている方の目が外側を向いている場合を外斜視といい、内側を向いている場合を内斜視といいます。上下にはずれた場合をそれぞれ、上斜視、下斜視とよんでいます。



 また、常に斜視の状態になっている場合を恒常性外斜視(こうじょうせいがいしゃし)と言い、時々斜視の状態なる場合を間歇性外斜視(かんけつせいがいしゃし)と言います。

 斜視は、他にも異常をきたします。2つの目で物をみる機能の異常です。人間は2つの目を同時に使い、別々に映った像を1つの視界として脳で認識しています。この機能を②両眼視機能と呼んでいます。立体的に物を見ることができるのもこの機能のおかげです。斜視があると、1つに像を結ぶことができないため両眼視機能も発達しません。また、両眼視できていないと、2つの目で見た物は別々な像として脳に映ります。これは、2重に見えてしまう複視の原因になります。この複視の状態では脳が混乱しまうため、はずれている方の目からの情報は、脳に伝わらなくなります。これを抑制といいます。抑制がかかった目は、使われなくなり視力が発達せず③弱視になってしまうこともあります。
 以上のように、斜視は①眼位の異常、②両眼視の異常、③弱視に関係する病気です。

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-斜視-
②斜視の原因


・めだまを動かす筋肉や神経の異常
・強い遠視があるなどの屈折異常
・脳腫瘍、脳動脈瘤、脳梗塞などの脳の障害
・外傷
・全身の病気(バセドウ病や糖尿病など)

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-斜視-
③検査

 まずは、視力検査、屈折検査、眼球運動を確認した上で目に病気がないかどうか眼底検査も行います。加えて検査機器を使って、目の位置のずれの程度をみたり、立体視機能をみたりなど詳しい検査を行います。
 脳の障害が疑われる場合は、MRIなどの画像検査をすることもあります。



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-斜視-
④治療

 前述したように斜視は①眼位の異常、②両眼視の異常、③弱視に関係する病気でしたので、これらを改善してあげることが治療につながります。
 まずは、メガネを用いて両目の視力を改善させてあげます。斜視で、はずれている方の目は弱視になっていることがあり、これを改善してあげることで斜視が改善することもあります。
 次に、目の位置をまっすぐにしてあげることです。眼鏡を使用したり、視能訓練士の指導のもと訓練をします。これでも改善しない場合には、手術をすることもあります。
 最後の目標は、両眼視機能の獲得です。人間の視機能(視力や両眼視など)は9歳くらいで大人と同じ機能が完成すると言われています。それまでの過程で両眼に視力差や斜視があると十分な両眼視機能が獲得できないままになってしまいます。ですので、早いうちに適切な治療を行うことで両眼視機能が発達するように治療をします。しかし、残念ながら、早期からきちんと治療を行っていても両眼視の獲得が難しいこともあります。

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