近視、遠視・老眼、乱視
-近視-
①近視とは
近視は屈折異常のひとつで、遠くから目に入ってきた光が網膜より手前で像を結ぶことで、ぼやけて見える状態です。近視は、眼軸長(“めだま”の長さ)が正常より長すぎる(軸性近視)か、角膜・水晶体の光の屈折力が強すぎること(屈折性近視)により起こります。
-近視-
②近視の原因
一般的に遺伝と環境が影響していると言われています。遺伝としては、親が近視だと子供も近視になる確率が高くなると言われていますし、環境要因としても昔から言われていることですが、近くで物をみる作業(読書、勉強、パソコン、携帯電話など)を長時間続けていると近視になりやすいという報告があります。
しかし、はっきりとしたデータは出ておりません。少なくとも現時点で言えることは、姿勢の悪い状態での近方作業、つまりは、右眼と左眼での焦点距離がずれてしまうような姿勢での作業は、近視化に影響しているのではないかと考えられています。
-近視-
③近視の頻度
近視は、欧米諸国と比べアジア人に多いと言われています。そのアジア人の中でも日本人は近視の頻度が特に高いと言われています。
ここで、文部科学省の学校保健統計調査における平成24年度のデータを例にあげてご説明します。裸眼視力1.0以下の割合は、幼稚園生27.52% 小学生30.68% 中学生54.38% 高校生64.47%と非常に高い値を示しています。さらに驚くことに同じデータを昭和54年度のものと比べてみると、昭和54年では、幼稚園生16.47% 小学生17.91% 中学生35.19% 高校生53.02%とこの30数年あまりで近視化がかなり進んだことがわかります。
ここから言えることは、環境要因として勉強やテレビゲームや携帯電話などで近くで物を見る作業を長時間続けることが、近視と強い関係があることは間違いなさそうです。
-近視-
④近視の矯正、治療
近視の矯正は、メガネやコンタクトレンズ、を用いて行われるのが一般的です。その他オルソケラトロジーという、寝ている間にコンタクトを装用するだけで近視を矯正する方法もあります。
凹レンズは、焦点(ピントが合う点)を遠くにする働きがあり、近視の人が適切な度の凹レンズをかけると、網膜にピントが合って遠くがよく見えるようになります。
また、近視に対する治療としては以下のようなものがあります。
点眼加療
調節けいれんという状態に対して行うものです。詳細は、次項で詳しくご説明しますが、近視状態が一時的な場合に用います。
レーザー治療
レーザー角膜内切削形成術(LASIK)やレーザー屈折矯正角膜切除術(PRK)と呼ばれる治療法があります。LASIKは、角膜に特殊なレーザー光を照射し、角膜の表面を薄く削り、フラップと呼ばれる蓋を作成します。そのフラップをめくった部分にさらに別なレーザーを照射し、角膜を削ります。その後、再度フラップを元の位置に戻すと角膜に生着します。これにより角膜の屈折率が変化し近視が矯正されます。PRKは、角膜自体が薄くLASIK不能例に行われることがある治療法です。この場合、フラップは作成しません。医師の説明を十分に受け、メリット、デメリットをご理解頂いた上で治療を受けてください。
-近視-
⑤近視の予防
近視の予防に関しては、様々な研究がなされていますが、これまでのところ前述の軸性近視を抑制する効果があると認められた実用的な治療法は、アトロピン点眼療法とオルソケラトロジーの2種類しかありません。
アトロピン点眼
アトロピン点眼に対して、海外で様々な論文が発表されていますが、眼科の中でも権威のあるophthalmologyという雑誌にもいくつも有効な研究結果が掲載されています。
これまで、アトロピンの全身への副作用(血圧上昇、心悸亢進、悪心、顔面紅潮、頭痛など)から、長期にわたる投薬が控えられてきましたが、通常の1%から100倍希釈した0.01%でも眼軸長を伸ばさない(近視を抑制する)効果が認められたため、より安全にお使い頂くことができます。
現在、国内では実施施設は多くはないですが当院では治療実施予定です。詳しくは、当院スタッフまでお気軽にご相談ください。
オルソケラトロジー
別項ご参照ください。
-近視-
⑥調整けいれん(調整緊張)とは
特に、小学生までのお子さんに多い状態です。読書や勉強、パソコン、テレビゲーム、携帯電話などの近くを見る作業を長時間続けていると、眼内の調節筋(毛様体筋)が常に働いて、近くにピントを合わせる状態を維持し続けることになります。この状態が続くと、一時的に屈折力が強くなり、近視に類似した状態になります。
これは昔でいう「仮性近視」の状態ですが、現在では「調節けいれん(調節緊張)」と呼ばれています。これは、眼が非常に疲れた状態とも言えます。
調整けいれんの検査(サイプレジンテスト)
点眼薬(サイプレジン)でピント合わせの力である調節力を抑えてあげて、本来の屈折値(近視なのか遠視なのか)を調べることができる検査です。特に小学生までのお子さんで初めてメガネを作るときには、必須の検査と言えます。
検査後24時間くらいは、まぶしさを自覚したり、ピントがあいにくくなるといった状態になりますので、検査は土曜日などをお勧めしています。
調整けいれんの治療
サイプレジンテストで調節けいれんと診断されれば、点眼薬による治療(ミドリンMやミオピン)で、調節けいれんの状態を緩和させてあげることができます。
もし、1,2ヶ月治療を行って効果が出ない場合は、本物の近視の状態になっていると判断し、お子さんが見づらい場合には、メガネを作製して頂けるようお勧めしております。
-遠視・老眼-
①遠視と老眼のちがい
一般的に遠視と老眼は、混同されがちで同じ状態のように思われやすいのでここでご説明させて頂きます。
遠視は、遠くを見る際の屈折異常で網膜より後方に光を屈折してしまいます。つまり物を見る際、常に調節が働かないと、遠くも近くもどこにもピントが合ってない状態です。この状態では遠くの方がやや見やすく、手元に近づけば近づくほど、どんどんピントが合いづらくなっていきます。
それに対して、老眼は、老化現象による調節力低下が原因で、近いところ(手元)を見るときにピントが合わない状態です。あまりご存知の方は多くないのですが、老眼の状態である調節力の低下は、20代のころから少しずつ表れ始め、50歳になる頃には、調節力全体の4分の3は失われてしまうと言われています。
-遠視・老眼-
②遠視の矯正
-遠視・老眼-
③子供の遠視について
赤ちゃんの眼球は、大きさが小さく、眼球の長さに対して眼の屈折力が弱いため、網膜上でピントを結べず、眼球より後方に光を屈折してしまいます。つまり、前述した遠視の状態になっており、物を近くで見せてあげても焦点をうまくあわせる事ができません。しっかりと物を見るためには屈折力を高めてピント調節をしていないと、ピントがどこにも合っていないのです。
子供は体の成長に伴い、めだまも大きく(眼軸長も長く)なり遠視から近視の方向に進んでいくため、弱い遠視であれば全く心配いりません。さらに、子供はピント合わせの力が強いので、ある程度の遠視であれば、自分の調節力で補うことができるのです。
しかし、遠視が強すぎると調節力だけでは、ピント合わせが追い付かず、常にピントの合っていない疲れた状態になり、弱視や斜視になってしまうことがあります。これらの状態は、適切な検査を受けて頂き、それぞれお子さんにあった治療を行うことで、防ぐことができます。
お子さんの視力に関して心配な点がございましたら、当院までお気軽にご相談ください。
-遠視・老眼-
④近視の人は老眼にならないってホント??
世間一般で、近視の人は老眼になりにくいという話を耳にしたことがある方も多いことと思います。あれは、本当なのでしょうか? 答えは、ウソです。実際は近視の人も遠視の人も同じように老眼になります。
近視の人は、もともと近いところにピントが合っていたので、近くを見るのに調節をさほど必要とせずに見ることができます。つまり、老眼を自覚しにくいので、老眼になっていないように感じるだけです。近視の人もメガネをかけて遠くにピントを合わせた状態にすると、近くを見るためには、調節が必要になりますので、老眼があると見づらくなります。
『メガネをはずすとよく見えるんだけどなー。』という方、いらっしゃいましたら、残念ながらそれが老眼の状態です・・・。
-乱視-
①乱視とは
乱視とは、角膜や水晶体のゆがみにより焦点が1ヶ所に集まらなくなり、像がぼやけて見える状態です。乱視が強くなると、裸眼ではうまく見えなくなってしまい、2重に見えたりするなどの症状がでます。
もし角膜や水晶体にゆがみがなく上下左右対称的なレンズであれば、理論上、乱視の状態にはなりません。しかし、人間の目は、少なからずゆがみがありますし、年齢的な変化としても角膜や水晶体にゆがみが出てきます。
-乱視-
②乱視の治療
基本的には、メガネやコンタクトレンズで調整することが一般的です。それ以外では、白内障手術時に特殊な眼内レンズを用いることで乱視を減らすことができます。
乱視の中には、不正乱視というメガネでも補正することができない乱視があります。原因としては、円錐角膜や翼状片、角膜炎などによる角膜の非対称的なゆがみが原因となることや外傷による水晶体偏移,白内障などでも生じます。