HOME > 診療案内 > 結膜炎






結膜炎


①結膜とは

 まぶたの裏側としろめの表面を覆う薄い膜です。図に示したとおりまぶたの裏側の結膜を瞼結膜(けんけつまく)、しろめの表面の結膜を球結膜(きゅうけつまく)と言います。この瞼結膜と球結膜は目の奥の方(結膜円蓋部)でつながっており袋状の形態をしています。ここで余談ですが、コンタクトレンズを使っている患者様から『コンタクトがめだまの裏側まで入ってしまって取れなくなったりしないんですか?』と質問を受けることがあるのですが、結膜の構造上、そんなことはありえないのです。どんなに奥にいっても結膜円蓋部でとまるからです。
 目を開いているかぎり結膜は常に外界にさらされている状態ですので、常に刺激を受けやすい状態になっています。加えて湿潤した暖かい環境であるため、細菌やウイルスの温床となりやすいのです。

▲ ページトップへ

②原因と症状、治療

 結膜炎はその病因により感染性結膜炎とアレルギー性結膜炎に分けられます。

❶感染性結膜炎・・・感染原因により以下のように分類されます。

細菌性結膜炎

 ばい菌(黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、淋菌、クラミジアなど)感染による結膜炎を言います。症状としては、充血、ごろごろ、メヤニ、異物感、熱感、眼痛などを自覚します。
 メヤニや結膜表面の細胞をこすり取り、それらの性状を詳しく調べることで原因菌を同定します。原因菌が特定できたら、その菌に有効な抗菌薬の点眼加療を行うことで治癒します。ただし、淋菌などの重篤な感染性結膜炎を発症すると急激に角膜まで病変が進行し、視力低下や角膜穿孔を引き起こすことがあるため、速やかに適切な加療を要します。


ウイルス性結膜炎

 ウイルスとは、細菌よりも小さな微生物で他の生物の細胞に入り込み寄生することで増殖しています。結膜炎をおこす原因となるウイルスはたくさんありますが、ここでは代表的なウイルス性結膜炎をご紹介します。

●流行性角結膜炎(はやりめ)
●咽頭結膜熱(プール熱)
 いずれも“かぜ”の原因となるウイルスと同じアデノウイルスの一種に感染することで発症します。それぞれ異なる潜伏期間(流行性角結膜炎:7~10日、咽頭結膜熱:1~2日)を経て、発症します。症状は、充血、ごろごろ、大量のメヤニ、異物感、熱感、眼痛など細菌性結膜炎と同様です。加えて耳の前を触れると痛みがでる(耳前リンパ節腫脹)こともあります。リンパ節はウイルスと闘う前線基地で免疫反応に関係しています。このリンパ節腫脹は、ウイルス性結膜炎に特徴的な所見です。咽頭結膜熱では、さらに咽頭炎や全身の発熱を伴います。一般にプールの水を介してうつることが多くプール熱とも言われています。
 流行性角結膜炎も咽頭結膜熱も非常にうつりやすい結膜炎で“はやりめ”と言われる状態です。非常に感染力が強く、涙やメヤニの中にウイルスが存在し、それを手で触れることで、接触感染が広まっていきます。とくに人が濃密に接触する機会の多い、職場、家庭内などでうつることが多いです。学校保健法の第三種学校伝染病に指定されているので、こどもの場合は、医師が周囲への感染力がなくなったと判断するまで学校を休まなければなりません。大人の場合はそのような法的根拠はありませんが、人と接触する機会の多い仕事に従事している方は、出勤停止を医師から指示される場合があります。

参考:文部科学省 『学校において予防すべき感染症の解説』
http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/1334054.htm(別ウィンドウで開きます)


●急性出血性結膜炎
 エンテロウイルスやコクサッキーウイルスというウイルスが原因となります。ウイルスの潜伏期間は1日と短く結膜下出血を伴い、前出のウイルス感染性結膜炎と同様にうつりやすいですが、症状は比較的軽いです。


ウイルス性結膜炎の治療
 結膜の細胞に存在するウイルスを排除する薬はありません。自己免疫のみで治癒しますが、炎症を抑える点眼薬や、細菌の混合感染を予防する目的で抗生物質の点眼など経過をみます。

生活上の注意点
・手をこまめに洗う
・目をこすらない、さわらない
・タオルをご家族と分けて使う
・入浴は家族の中で最後にする
・プールは医師の許可がでるまでお休み
・学校も医師の許可がでるまでお休み

登校の基準(文部科学省ホームページより)
流行性角結膜炎・・・医師において感染のおそれがないと認められるまで出席停止とする。
咽頭結膜熱・・・発熱、咽頭炎、結膜炎などの主要症状が消退した後2日を経過するまで
        出席停止とする。
急性出血性結膜炎・・・医師において感染のおそれがないと認められるまで出席停止とする。





❷アレルギー性結膜炎

アレルギーとは

 人間の体は、外から異物が入ると、免疫機構が働いてその異物を排除しようとします。この仕組みは、外界から体を守るために必要不可欠な反応といえます。アレルギーもこの免疫反応の一つですが、細菌やウイルスなどの病原微生物に対して生じる反応と違い、本来無害なものに対して体が過剰に反応してしまうということです。異物を排除しようという反応が行き過ぎとなり、体に不都合な症状を引き起こすことを『アレルギー』といい、原因となる異物を『アレルゲン』と言います。このほかにも、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などもアレルギーと関係する疾患です。

症状




 かゆみ/メヤニ/ゴロゴロ(異物感)/充血/涙目 など

原因物質 

季節性アレルギー



通年性アレルギー
ハウスダスト(チリ、ホコリ、ダニ、カビなど)
ペットの毛
コンタクトレンズに付着した汚れ


治療

 アレルギー性結膜炎の治療には点眼薬が主体になります。
●メディエーター遊離抑制薬
 アレルギー症状を引き起こすヒスタミンなどの物質が放出されないようにする薬です。
●ヒスタミン受容体拮抗薬
 放出されたヒスタミンが作用しないようにブロックする薬です。
●ステロイド薬、免疫抑制薬
 上記では効果のないような重症例で用いることがあります。


注意事項

 花粉が飛び始める2週間前くらいからの点眼が有効とされていますので、
早めの受診をおすすめしています。

特殊なアレルギー性結膜炎

●春季カタル

 アレルギー性結膜炎の慢性重症型で小学生くらいまでの男児に多く見受けられますが、アトピー性皮膚炎を合併すると20歳代でも発症することがあります。原因は、ハウスダストやダニが原因となることが多いようです。症状としては、アレルギー性結膜炎と同じですが、加えてまぶたの裏側がでこぼこ(石垣状乳頭増殖)してきたり、くろめとしろめの間が腫れてきたり、くろめに細かな傷がついたりします。これがひどくなると、黒目の表面がただれてくること(角膜潰瘍)もあります。治療としては、ステロイド点眼が有効ですが、難治例は免疫抑制薬を用いたり、外科的治療をすることもあります。

●巨大乳頭結膜炎

 巨大乳頭結膜炎とは、上まぶたの裏側に、大きなでこぼこしたぶつぶつ(乳頭増殖)がびっしりとできてしまう状態です。コンタクトレンズについた汚れに対するアレルギー反応が原因で、汚れたコンタクトレンズを、数か月使用すると起こってくることが多く、ほとんどがソフトレンズ装用者にみられます。メヤニ、ゴロゴロ、コンタクトレンズのくもりなどの症状がでます。治療は、アレルギー性結膜炎と同様ですが、コンタクトレンズは1日使い捨てのタイプに変更することをおすすめします。

▲ ページトップへ