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白内障


①白内障とは

 目の中の水晶体とよばれるレンズの働きをする組織がにごってしまう病気です。水晶体は、カメラのレンズに例えられ、外から入ってきた光を目の奥の網膜に結像する働きがあります。白内障になると本来透明であった水晶体がだんだん濁り、光が通りづらくなりますので、目のかすみや視力低下などの症状が現れます。白内障になる原因の9割以上は、加齢による変化ですが、他にも別な病気(糖尿病やアトピー性皮ふ炎、ぶどう膜炎など)や薬の副作用や外傷が原因になることもあります。
 日本で行われたある調査では、60歳代では約7割、70歳代では8割以上の人に、そして80歳以上ではほぼ全員に、白内障がみられるという結果も出ています。ただし、病状には差があり、視力障害の程度は様々です。

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②白内障の症状


・かすんで見える
・ぼやけて見たいものがはっきり見えない。
・まぶしさを自覚するようになる
・メガネの度数を変えても見えない。
・二重三重に見える。
・一時的に近くが見えやすくなる。

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③白内障の濁り方

白内障による水晶体の濁り方にも様々あります。
・核白内障・・・ 水晶体の中心部の核から濁りが始まるタイプ
・皮質白内障・・・水晶体の周辺部から中心に向けて濁るタイプ
・嚢下白内障・・・水晶体の後ろ側の皮質が中央から濁るタイプ

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④白内障の治療

 白内障に対する有効な治療法は、唯一、手術しかありません。
 白内障の進行が軽度の患者様に対して、点眼薬による治療を行うことがあります。しかし、これまでに発売されている白内障に対する点眼薬は、進行を抑える薬であって、すでに存在する濁りが改善するものではありません。また、点眼薬を使用しているからといって進行を完全に抑えることはできません。あまり効果が期待できない薬のため、欧米ではほとんど使われていない現状もあります。こういった点からも、すでに進行した白内障に関しては、手術するしか治療法はないのです。
 ※ここでご理解頂きたいのは、手術後ほとんどの方が見えるようになりますが、白内障の手術を受ければ、誰もが必ず視力が出るものではありません。他の眼の病気が原因になっていることもあります。手術を受けられる前に、十分に医師の説明を受け、ご納得して頂いた上で手術を受けられることをお勧めします。ご不明な点ありましたら気兼ねなく当院スタッフまでお聞きください。

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⑤手術の流れ

 私ども医療従事者にとって毎週のようにやらせて頂いております手術ですが、患者様の立場になりますと初めての事ですので、とても緊張されてしまうと思います。ここでは、少しでも事前に手術の流れをイメージして頂くために、手術室に入ってからの流れをこと細かに箇条書きにしてみました。写真をご覧頂くとともに、少しでも患者様の術前の緊張や不安が和らぎましたら幸いです。

手術室入室から手術開始まで

 ●手術室入室後、手術専用のイスに座って頂きます。
  ↓
 ●血圧計、心電図、血中酸素飽和度を測る機械をつけます。
  ↓
 ●イスが電動で倒れ、仰向けに寝て頂きます。
  ↓
 ●目の周りや白目の表面の消毒をします。
  ↓
 ●目のところだけ孔のあいた清潔な布をお顔にかけます。
  これ以降は、お顔を触らないようご協力下さい。
  ↓
 ●目に透明なシールを貼り、まぶたをひろげる器具をつけます。
  ↓
 ●ここから実際の手術が始まります。詳細は、次項でご説明します。
  ↓
 ●手術が終わりましたら、お顔の布を外して、静養室に移動して頂きます。


実際の手術内容

❶点眼薬の麻酔をします。




❷角膜に手術中の道具の通り道(創口)を作ります。切開創はわずか2.4mmです。
 なんとも痛そうな写真ですが、麻酔がしっかり効いているので痛くありません。

❸水晶体の前面のうす皮を丸くくりぬきます。(CCC)
 CCC: continuous curvicular capslotomy

 白内障のある水晶体は、外側の透明な皮の部分と中身のにごりからなります。
 ここでは、水晶体前面のうす皮を丸くくりぬきます。

❹水晶体の中身(にごりの本体)を分割する。
 三井記念病院の赤星先生が考案されたプレチョップ法を用いて、
 水晶体を分割します。

❺分割された水晶体の中身を超音波で粉々にしながら吸引します。

❻眼内に折りたたんだ人工のレンズを挿入し、創口を閉じ手術終了です。

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⑥当院の手術の特色

点眼麻酔(局所麻酔)による痛くない手術

 当院での白内障手術は5分程度で終わることがほとんどで基本的に点眼麻酔のみで、痛みを感じず手術を受けて頂くことができます。
※手術時間や麻酔に関しては、症例によって変更になることもあります。詳しくは、手術前に医師のご説明をお聞きください。

Alcon社 Accurusによる低侵襲で安全な手術

 技術ならびに機械の進歩により白内障の手術は2.4mmという小さな切開創から手術を行うことができます。通常の白内障手術では、治療しませんが、難症例白内障手術や予期せぬ合併症が起きた場合、水晶体の後ろにある硝子体手術が必要になります。当院では、Alcon社 Accurusによる25Gシステム硝子体手術も可能ですので、特殊な白内障や難症例白内障、予期せぬ合併症にも対応可能です。詳しくは、医師までご相談下さい。

Tomey社 OA-2000による眼内レンズ度数決定

 白内障の術前検査において、眼軸長測定は、眼内レンズ度数を決定するための重要な検査です。少しでも測定誤差が起きると、予測度数との間にずれが生じてしまします。従来、超音波Aモード法にて、眼軸長を測定するのが一般的でしたが、当院では最新の光干渉式眼軸長測定装置(Tomey社 OA-2000)を導入しました。これにより誤差の少ない、より正確な眼軸長測定が可能となり、精度の高い度数決定が行えます。

徹底した眼内炎対策

 白内障の術後合併症の一つに眼内炎という、手術時作成した創口からまぶたに常在する細菌などが目の中に入ってしまう合併症があります。この状態になってしまうとせっかく手術は無事に終えたとしても、目の中を洗う再手術が必要になることがあります。このリスクを少しでも減らすため当院では、徹底した消毒を行います。従来より行われている手術数日前からの抗菌剤点眼や術直前の洗眼に加えて、手術中も頻回に消毒液で創部を消毒したり、手術終了時には、抗生剤を添加した還流液で眼内を洗います。

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⑦眼内レンズについて

 白内障の手術時に使用する眼内レンズはおおまかに3つあります。

○単焦点レンズ…ピントが合う距離が1つ
多焦点レンズ…ピントが合う距離が複数
乱視補正レンズ…乱視の矯正効果のあるレンズ(単焦点)

  眼の状態と手術時に使用する眼内レンズによって見える“範囲”と“質”に違いがでてきます。
 ここで、その“範囲”と“質”についてご説明します

 範囲:単焦点レンズと多焦点レンズが関係します。



 質:もともとある乱視の状態や乱視補正レンズが関係します。

 この“範囲”と“質”をふまえて、各眼内レンズの特性についてご説明します。


単焦点レンズ

 通常の白内障手術で用いられるレンズです。焦点が合うところが1か所ですので、ピントを遠くに合わせれば手元用のメガネが必要になりますし、ピントを手元に合わせれば遠用のメガネが必要になります。
 前述の“範囲”でいう狭くはなりますが、ピントを合わせたところは、くっきりとよく見えます。(もともとの乱視が強くない場合)。

多焦点レンズ

 多焦点レンズは、レンズを改良することで遠くから中間、近方に至るまである程度ピントの合うレンズです。“ある程度”というのはレンズの構造上、複数に焦点が合うようになっているため、単焦点レンズで焦点を合わせたところ(遠方もしくは手元)の見え方と同部位の見え方を比べると多焦点レンズでは少しピントのあまい状態になります。また、暗いところでは光が散乱し、にじんで見えたりすることもあります。
 この多焦点レンズは、保険診療では使えないレンズですので、自由診療の扱いとなります。詳しくは、当院スタッフまでお聞きください。

乱視補正レンズ


 前述した見え方の“質”ですが、おもにこれは乱視が影響してきます。近視も遠視もない若い人でも乱視があると遠くも近くもぼやけた見え方になってしまいます。同じように単焦点レンズや多焦点レンズを入れた方でも乱視が強いと術後の見え方は、乱視を矯正するメガネがないとぼやけてしまいます。
 もともと乱視をお持ちの方には、乱視補正レンズを用いることで見え方の“質”を改善してあげることができます。(このレンズは、単焦点になります。)しかしながら、不正乱視という特殊な乱視がある患者さんの場合には、乱視補正レンズでは、矯正することができません。逆に、レンズの種類に問わず白内障の手術を受けるだけで乱視がなくなる患者様もいます。手術を受けて頂く際には、ライフスタイルに合わせてかつ、患者様それぞれの目の状態に合ったレンズをお使い頂けるようにご提案させて頂きます。ご不明な点は、当院スタッフまでお声かけください。

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⑧手術をお考えの方へ

 白内障は加齢性変化で誰もがなりうる疾患です。その代表的な症状である“かすみ”や“まぶしさ”に対する自覚には個人差があります。診察上、かなり白内障が進んでいる患者様でも自覚症状がまったくなかったり、逆に裸眼視力が1.2まででているにもかかわらず、見え方に不満を持っていらっしゃる患者様もいらっしゃいます。このように見え方には個人差がありますので、手術を受けて頂く時期としましては、患者様ご自身で見え方が不自由になったときや、もう少し見えるようになりたいというご希望があるときにやらせて頂いております。手術は、医療技術の進歩に伴い非常に安全性が高まっておりますが、まれに合併症が起こる可能性もあります。ご家族様を含めまして十分に医師の説明を受け、メリット、デメリットをご納得された上で手術を受けて頂くことをお勧めします。

※多焦点眼内レンズをお考えの患者様へ
 多焦点眼内レンズは、前述したとおり遠くも近くもピントが合うレンズですが、手術を受けると若い時と同じように戻るわけではありません。レンズの特性上、単焦点レンズと比べるとピントがあまくなり、夜間、光がにじんで見づらいなどの特徴があります。夜間、長時間運転をされるような方には不向きになります。また、乱視は残るので、乱視が強い方にもお勧めしておりません。ご自身のライフスタイルと眼の状態から総合的に判断し、医師の説明にご納得された上で手術を受けて頂くことをお勧めします。

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⑨術後のメガネ

 白内障は、水晶体のにごりが原因でしたが、そもそも水晶体はレンズの働きをしている組織です。毛様体の機能と連動してレンズが厚くなったり薄くなったりして遠くから近くのものまでピントが合う構造になっています。ところが、このピント合わせの機能が落ちてしまうのが老眼(調節力の低下)です。
 年齢的な変化で、ほとんど失われてしまう調節ですが、単焦点眼内レンズを挿入した場合、術後の見え方として、ある1点にピントが合います。つまり、遠くにピントが合えば、遠くはメガネなし(乱視が強くない場合)でよく見えるようになりますし、近くにピントが合えば、手元はメガネがなし(この時も乱視が強くない場合)でよく見えるようになります。ですがその反面、遠くにピントを合わせた場合は近くが、また、近くにピントを合わせた場合は遠くがメガネが必要になります。どこにピントを合わせるかは、ご希望で決めて頂くことになります。基本的には遠くにピントを合わせることが多いです。

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⑩治療スケジュール

手術までの流れ


●初診時
 視力検査や眼底検査などを行い白内障の程度と目の病気が他にないか診察します。




 ↓
●手術申込み
 手術が必要な白内障を認めた場合、手術の申込み(予約)をさせて頂きます。
 このとき、体の病気が手術に影響しないかどうか内科医師に相談させて
 頂いております。
 ↓
●手術前検査
 白内障手術に必要な検査を施行させて頂きます。
 (角膜内皮細胞顕微鏡検査、超音波検査、採血検査、網膜電位図など)
 ↓
●手術内容ご説明
 白内障手術に関するご説明を受けて頂きます。
 具体的な手術の流れや合併症について、術前後の過ごし方などの内容になります。
 わからないことがございましたら、遠慮なく医師、スタッフまでお声かけください。
 ↓
●手術3日前から点眼開始
 感染予防に点眼を開始して頂きます。
 手術を受けて頂く眼に1日4回点眼をお願いします。



 ↓
●手術当日
 指定されたお時間までにご来院下さい。
 なお、当日の朝食、昼食はとって頂いて構いません。
 また、当日のお化粧は控えてください。
 ご自身で運転されてのご来院も控えてください。
 手術終了後、眼帯をしたままお帰り頂くようになります。
 ↓
●手術後の診察
 術後の診察は、術後1日目、2日目、4日目、8日目、2週間後、1か月後、2か月後
 という流れになります。その間、点眼治療を行って頂きます。
 基本的には、術翌日から眼帯の必要もなくなり見え方の改善を自覚して頂けるかと
 思いますが、視力が安定するまでの期間には個人差があります。
 また、術後早期は、感染症予防対策として洗髪,洗顔(術後3日間)や激しい運動、
 飲酒などに制限がありますので、詳しくは術前の説明をお聞きください。
 術後の就業についてもお問い合わせ下さい。

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⑪手術費用

※薬代含む
※表中の料金はすべて片目分の費用です

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⑫Q&A

Q1.
手術は痛いですか?

A1.
手術を受けられる患者様が一番心配されるところだと思います。答えは、いいえ、痛くありません。白内障手術の時の麻酔は、基本的には点眼麻酔のみで手術可能です。全身麻酔のように眠ってしまうわけではありませんので、手術中は、会話することができます。もし痛みを感じられるようであれば、随時麻酔を追加できますので、遠慮なくおっしゃって下さい。手術を受けて頂いた患者様に痛みの有無をお聞きしますと、ほとんどの患者様が痛みを感じなかったとおっしゃって下さいますので、どうぞ心配されずに手術を受けてください。
実際のところ、手術は顕微鏡で強い光を目に当てながら進めていきますので、痛みというよりまぶしさを感じるかもしれません。

Q2.
手術はどうなったら受ければよいですか?

A2.
基本的には、患者様ご自身で見づらさを自覚するようになった時が、手術を受けて頂く時期と考えます。白内障による水晶体の濁り方も人それぞれ違いますし、その濁りによる実際の見え方も個人差があります。手術に際し、医師の説明を受け、メリット、デメリットを十分にご理解頂き、ご納得されてから手術を受けて頂くことをお勧めします。

Q3.
術後眼内レンズはどこにピントを合わせたらいいですか?(単焦点レンズの場合)

A3.
当院では、患者様からのご要望がない限り、基本的に眼内レンズは、遠方にピントを合わせることが多いです。その場合、手術後は手元を見るのに老眼鏡が必要になることが多いですが、遠方は眼鏡がなくても見えるようになります。その一方で、もともと近視があった方や術後お仕事で手元を見る時間が長い方の場合には手元にピントを合わせることもあります。近視ということは、遠方は眼鏡がないと見えませんが手元は眼鏡を外せばよく見える状態です。この状態になれている方(元来、近視をおもちの方)に、白内障手術をして遠くにピントがあったレンズを入れてしまうと、遠くは眼鏡がなくてもよく見えるようになったとしても、手元が老眼鏡をかけないと見えなくなり、ものすごく不自由さを感じてしまうこともあります。目の状態も様々ですし、ライフスタイルもまた様々ですので、レンズの度数決定は慎重に行う必要があります。患者様お一人お一人の『QOV:quality of vision(見え方の質)』の改善が私たち医療スタッフの願いですので、疑問点などありましたらご遠慮なくお声かけください。

Q4.
術後の診察はどれくらい必要ですか?

A4.
手術当日は、眼帯をした状態でお帰り頂きます。術翌日の診察まで眼帯はとらずにお越し下さい。術翌日は朝一番始めに予約をおとりしますので、予約時間にいらして下さい。経過問題なければ、この日から眼帯は不要になります。その後の診察は、術後2日目、4日目、その後1週間後、2週間後、1か月後、2か月後という流れになります。また、目の状態によっては、もう少し細かい間隔で来院して頂く場合もあります。

Q5.
術後の運動や入浴に制限はありますか?

A5.
はい。あります。手術後一番気を付けたいのがバイ菌感染です。目をこすったり、さわったりするのは避けてください。
手術当日は、入浴不可になりますが、術翌日から、首から下の入浴、シャワーは可能になります。お顔は洗わないで清潔なタオルで拭く程度にしてください。洗顔や洗髪は術後5日目から可能になります。
手術後1週間経過すれば、運動もして頂いて大丈夫ですし、通常のお仕事も可能になります。職種によって仕事が可能な時期が異なりますので、詳しくは医師までご相談ください。
手術後数か月経てから発症するバイ菌感染(遅発性眼内炎)もありますので、術後は普段から清潔を心がけてください。
また、車の運転に関してですが、術当日、術翌日は不可です。それ以降は、視力が安定していれば可能です。運転前に医師に相談して下さい。視力が出ていても術前後で見え方が変わっておりますので、十分な注意が必要です。

Q6.
手術後は、すぐに見えるようになりますか?

A6.
とくに合併症なく手術が終われば、術翌日からはっきりと見えるようになります。
術後は、水晶体のにごりが取れた分、目の奥にたくさんの光が届くようになり、まぶしく感じたり、飛蚊症を自覚されたりする方もいらっしゃいますが、その症状は徐々に慣れていきます。

Q7.
白内障の手術をするのは1回だけですか?

A7.
基本的には、1度だけです。
再手術をする例としては、目の中に挿入した眼内レンズの度数があまりにも予定したものとかけ離れている場合は、術後早期に入れ替えることがあります。眼内レンズの寿命も数十年以上と言われており、レンズの寿命で再手術ということはありません。
また、再手術をするということではありませんが、術後の経過として、見え方に再度かすみが出てくることがあります。これは、手術時、眼内レンズを留置する際、目の中に残す水晶体嚢に後から濁りが出てくることが原因です。これを後発白内障と言います。
発症する時期は、様々で術後早期から数十年後といったこともあります。処置として、外来でレーザー治療をすることで濁りを取り除くことができます。

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