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ぶどう膜炎


①病態と原因

病体

 ぶどう膜とは聞きなれない言葉だと思います。初めて耳にされる方も多いのではないでしょうか?虹彩、毛様体、脈絡膜を総称してぶどう膜と呼んでいます。この組織になんらかの原因で炎症が起きてしまうことをぶどう膜炎と言います。ぶどう膜は、血流の豊富な組織であり、炎症反応も血管を主体として起こりますので、ぶどう膜は炎症を起こしやすい部位と言えます。

原因

 ぶどう膜炎の原因は多種様々ですが、約半数をサルコイドーシス、Vogt-小柳-原田病(以下原田病)、ベーチェット病という病気で占めています。従来これらは3大ぶどう膜炎と呼ばれてきましたが近年、ベーチェット病は減少傾向にあり、その状況は変化してきています。その他の、原因としては、細菌やウイルス感染,真菌(カビ),寄生虫,膠原病,血液疾患や悪性腫瘍,糖尿病,強膜炎など様々あります。一方で、原因が特定できないぶどう膜炎も3割から4割程度存在します。ですので、受診して頂いた際は、どんな些細なことでもいいので、伝えて下さい。渡航歴や飼っているペットのこと、数か月以内に生肉を食べた既往なども診断の重要な手掛かりになることもあります。

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②症状

 ぶどう膜炎になると、目の中の透明な部分(前房や硝子体)に炎症細胞が浮遊するようになるため、以下のような症状が出ます。

主な症状

 ・視力低下
 ・飛蚊症(虫が飛んでいるように見える状態)
 ・霧視(霧がかかったようにかすんで見える状態)
 ・まぶしく見える。
 ・充血
 ・眼痛



サルコイドーシス

 全身のいたるところ(眼、肺、心臓、リンパ節、皮膚、神経など)に肉芽腫が形成され、その肉芽腫が形成された臓器の障害が症状として現れる原因不明の疾患です。特に性差はなく、発症年齢は男性では20代にピークがあり、女性では20代と50代と二峰性のピークを示すといわれています。肉芽腫とは、異物を封じ込める生体の防御反応の一つで正常な免疫反応なのですが、ここに異常をきたし、本来であれば自然消失する肉芽腫が消失せず線維化することで病気が発症します。眼の所見としては、虹彩に肉芽腫を伴うぶどう膜炎を引き起こします。この炎症所見が改善したり悪化したり慢性的に続きます。眼の治療に関しては、炎症を抑えたり、免疫反応を抑制する目的でステロイド薬が治療の中心になります。点眼や注射で用います。
 また、肉芽腫が心臓や肺にできると早急な治療が必要になることもあり、内科の先生と連携しながら、経過を見ていきます。

原田病

 自分の体の免疫反応が正常な自分の組織を攻撃してしまう自己免疫疾患です。原田病の場合、メラノサイト(紫外線から体を守るメラニン色素を作る細胞)を標的にします。このメラノサイトがぶどう膜に多く含まれるため、眼に症状が出てくるほか、難聴、耳鳴り、皮膚の白斑、髄膜炎、白髪化など様々な全身症状が現れます。眼症状としては、水が貯まって網膜が剥がれてしまう漿液性網膜剥離が必発し、視力が低下してしまいます。発症早期よりの加療が重要で入院の上、ステロイド薬の点滴加療を行います。

ベーチェット病

 厚生労働省の定める特定疾患(難病)の1つに指定されている病気で前述したサルコイドーシスもこの中に含まれます。(http://www.nanbyou.or.jp/entry/187
 全身の皮膚や粘膜に発作性に炎症を引き起こし、再発寛解を繰り返す原因不明の慢性自己免疫性疾患です。4つの主症状と5つの副症状の組み合わせからなります。

●主症状
 ❶眼症状
  ぶどう膜炎をおこし、眼痛,充血,まぶしさを自覚します。時には眼の中に炎症産物(膿み  たいなもの)が貯まることがあります(前房蓄膿)。眼底にまで炎症が及ぶと網脈絡膜炎を  引き起こし視力が低下します。
 ❷アフタ性口内炎
 ❸外陰部症状
  外陰部に潰瘍ができます。
 ❹皮膚症状
  にきびのような発疹が出るほか、様々な皮膚症状が出ます。

●副症状
 ❶関節炎
 ❷血管病変
  深部静脈血栓症などを認めます。
 ❸消化器病変
  潰瘍ができることがあります。
 ❹神経病変
  髄膜炎などになることがあります。
 ❺副睾丸炎




 治療に関しては、多種多様な症状がでますので、包括的な治療が必要になります。眼科的には、速やかに炎症をおさえるべく、ステロイド薬や免疫抑制薬を用いたり、抗TNFα抗体(レミケード)という全く新しい炎症を抑える薬も使えるようになり、治療成績も上がってきています。

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③治療

 ぶどう膜炎の治療では、原疾患の治療とともに炎症や免疫反応を抑えるステロイド薬の使用が不可欠となります。ステロイド薬は、即効性もありよく効く半面、副作用も見られることが多い薬剤です。その副作用は、眼圧が上がりやすくなったり、感染症になりやすくなったり、白内障が進んだりなどがあげられます。適切に使えばとても良い薬ですので、治療を受けられる患者様も薬の事を十分ご理解頂き、医師との信頼関係の上で治療を受けて頂くことをお勧めしております。

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